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"BIRTHDAY PRESENT"



11月30日。
葉月三夜の19歳と48ヶ月の誕生記念日にそれは届いた…。




予告していたゆかり嬢のプレゼントを晒し公開します。
画像が多いので「重たいな」という人はリロードしてみてください。

なお、視覚上よろしくないものが一部ございます。
お食事中の方はお食事を済まされてから、再度ご覧ください。


今回はサウンドノベルちっくにお送りします。
はい、「サウンドないやん」って突っ込みはナシで。

それではスタート!





――徹夜明けで朦朧としたまま誕生日を迎えた私の元に小包が届いた。
星矢友人・ゆかりが誕生日プレゼントとして送ってくれたものである。
事前に知らされていた私ははやる気持ちを抑えながら荷物を開封した。

彼女の職場の袋をあけると中にやや大きな封筒が入っていた。




『このエリアは24時間監視されています』と書いてある。
写真では見えにくいが、封筒の中央に印字され、セロテープではりつけてある。

ここまでネタを仕込むとは彼女らしい、そう思いながら封筒の上部を切除する。


ん? 何だ、これは?





『青』少なくとも私にはそう見える。

しかしこの文字、この色合い。どこかで見たような記憶が……。



……だめだ、思い出せない。だがなぜだろうか。妙に嫌な汗がつたう。

何だ。何を恐れているんだ。ただの箱と袋じゃないか。
落ち着け、落ち着くんだ葉月三夜。
私はそう自分に言い聞かせながら、袋の中身をいっせいに机の上へと出した。







嫌な汗の意味はこれだったのか。

袋の中身を出した瞬間、私は自分の動物的な直感にため息をついた。

中に入っていたのは、バースデーカードと、おまけの絵葉書。
さらにMDとどくろ柄のミラー&コーム。

そして粉末の青汁と――青汁ようかん!?



な……何を考えてるんだ! 青汁のようかんだと?!
こんな、こんなものがこの世に存在していいのか!!


だめだ。目を向けてはいけない。

慌てて目をそらした私は、何か気を紛らわせようとバースデーカードを手に取った。



『誕生日を迎える方は必ずお読みください!』

何。そんなに重要なことが書いてあるのか。

そっとカードをめくる。
右上、一番初めに『正しい迎え方』というものがある。

『古い年令は必ずお捨てください。なるべく平静を保ってください』


大丈夫だ。私はもう新しい年と向かい合っている。
そう。昨日までの『47ヶ月』の私ではない、『48ヶ月』の私なんだ。

しかし、妙に心にひっかかるのはなぜだろうか。


カードにはその他にも守備事項や注意書き、果てには健康指南やアフターサービスまで書いてある。
そして、最後にゆかりの字でメッセージが書いてある。

「お祝いしてるのヨ」か。

私は、彼女がどんな顔でこれを書いたのかが無性に気になった。


『OLYMPIA』と書かれた絵葉書は彼女の机から出てきたものらしい。
葉書の裏に、他のプレゼントの説明が書かれてある。

ああ、このMDは以前私が彼女に教えてもらった歌手のものだ。
CDを買いに行こうと思ってそのまま忘れてたものだ。ありがたい。

そしてミラー&コームは……。「豪遊人のあなたに」?

……私、豪遊なんてしていたかな?





……最後に残ってしまった。





彼女はこれを私にどうしろと言うのだろう?

粉末の青汁はわかる。
私がここで常に行っている『青汁カルピス』の助けに、と入れてくれたのだろう。
楽しみ苦しみつつも自分に罰を与えている私だが、正直言って青汁を買いに行くのは恥ずかしいし、何より余分な金がかかる。

きっと彼女はそれを見越して送ってくれたのだろう。
とりあえず、少しだけ心の中で感謝してみた。


しかし、しかしだ。
この『青汁ようかん』なるものはどうすればいいのだろう。

まさか、食せというわけではあるまい。
しかし観賞用としても、その用途を果たすとは思えない。

誰かに食べさせるとか?
いや、食べさせたら私が血の雨が降るのを見ることになってしまう。

――いったいどうすれば。

悩んだ私の目にふいに飛び込んでくる文字があった。


『二度と忘れられない味』

私の中の好奇心が小さくざわめきだした。
どれほどなのだろう? 「二度と」というくらいなのだから、凄いものなのだろう。

……気になる。気になってしょうがない。
目をそらそうとしても、その字が飛び込んできて釘付けにさせる。


(食べて、みようか……)

一度目覚めた好奇心はとてつもなく危険な選択肢を与えた。
慌てて頭を横に振る。

それだけはよせ!

頭の中で警鐘が鳴り響く。
しかし、私の意思に反して手はするするとその箱へと伸びていく。

もう、どうしようもなくなっていた。





気がつくと私は台所で包丁を握っていた。

目の前にあるのはアルミごと切られた緑色の物体。
薄く切られたそれは、ほのかな青香を放っていた。

ついにやってしまった――。

包丁を握り締めたまま、私は呆然とそれを見下ろした。
明らかにこの世の食べ物ではない。
本当に二度と忘れられないような――。色といい香りといい見た目といい。


さあ、これをどうしよう。
そう思った私の頭に名案が浮かんだ。

そうだ。アレも作ってしまおう。
私は慣れた手つきで、冷蔵庫にしまってあったパックを取り出した。

もう、後には戻れない。







か……体に良さそうだな。

並べてみて、改めて自分が起こした事の重大さに気がついた。

緑一色に染まる皿とグラス。
グラスのピンク色がまた緑と調和していなくて目に痛い。


カルピスで割っただけマシか。
水で割っていたらとんでもない色になっていただろう。

青汁ようかんもきちんと盛り付ければ悪くはない。
一瞬抹茶ようかんのようにも見えるし、これならば大丈夫だろう。

――待て。何が大丈夫なんだ! 食べるのは自分自身ではないか!!

正直に言ってしまうと、これを食べるのは嫌だ。どうせなら避けたい。
もし私が極刑を受けるため牢屋に閉じ込められているとして、最後の晩餐がこれだと知ってしまったら、何も食べずに裁きを受けるだろう。

……『最後の晩餐』か。

そうだな。ある意味これ以上最強の食事はあるまい。
もう私は過ちを犯してしまった。
ならば、いっそ『最後の晩餐』とやらを受け入れるのも悪くはない。

そう決意した私は、飲み慣れた味を一口含むと、緑色のそれにかじりついた。


――目の前が緑色に染まっていった。





ふと気がつくと私はPCに向かっていた。
特に何をするでもなく、ただモニターを見つめている。

(何をしていたんだっけ?)

思い出そうとしてもあまり鮮明には浮かんでこず、数十秒だろうか、そうしたままでしきりに記憶の糸をたどっていた。

『最後の晩餐』

ふいにその言葉が頭をかすめ、はっとする。
そういえば私は、『最後の晩餐』を食して……いや、そんなはずはない。
世間の一般常識程度は備えているつもりだ。あんなもの、食べるはずがない。
あれは夢だ。そうだ、真夜中だから眠気に襲われ夢を見たんだ。

そう自分に言い聞かせ、ふと横を向いた。



夢ではなかった。
私のPCの横には何もない茶色の皿と、緑色がこびりつくグラスがあった。



嘘だ! 嘘だ! 嘘だ!!

声こそ出さなかったが、私は心の中で絶叫した。
違う! 断じてあんなもの……。

そう思った私の口の中に妙な味がよみがえった。

『二度と忘れられない味』

確かにそうだ。もう体が記憶している。
私は口の中に広がる味を抑えようとタバコに火をつけ、深く吸い込んだ……。

何か、ずっと見張られているような気になりながら――。





SECURITY SYSTEM
THIS AREA IS UNDER 24 HOUR SURVEILLANCE

――このエリアは24時間監視されています――






Fin.


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